HAZAN

板谷波山は、日本の近代陶芸の開拓者であり、陶芸家としては初めて文化勲章を受章している。波山の作品には青磁、白磁、彩磁(多色を用いた磁器)などがあるが、その創作にあたっては造形や色彩などに一切の妥協をせず、完璧を期したという。
私が、波山の作品を初めて観たのは2001年の出光美術館での展覧会だった。たしか新日曜美術館で紹介され、その美しさに惹かれて出かけて行ったのを覚えている。特に、波山独自の手法である葆光彩磁(ほこうさいじ)による淡い光沢、パステルカラーのような色彩の柔らかさは、言葉では言い尽くせないほど素晴らしいものだった。草花を素材にしたデザインも秀逸なもので、その斬新さ、完成度の高さ、気品、格調の高さなどは他に類を見ない。

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この板谷波山をモデルにした映画がHAZAN(2004年に公開/ブルガリア・ヴァルナの国際映画祭でグランプリを受賞)で、先日BSで放送されたものを録画しておいたのだが、やっと観ることができた。
波山を演じるのは榎木孝明。彼は武蔵野美術大学デザイン科(陶芸専攻)出身とのことで、その意味でぴったりの役柄。一方、南果歩もこれ以上はないと思わせる芸術家の妻を演じる。安定した職業を捨てて陶芸家になるということは、赤貧を覚悟しなければできないことだった。生活より芸術を選ぶということは俗人にできることではない。まして多くの子供たちをかかえながら・・。
それにしてもこの映画、言葉、映像、音楽など全般にわたり、余計なものをすべてそぎ落とした、たいへん禁欲的な演出で、ある意味で全編に静けさの漂うつくりだった。
「葆光」とは光を包み隠すという意味で、一連の葆光彩磁作品は、薄絹や春の霞で器全体を被ったかのように、優しく穏やかな独特の光沢を放っている。それに通じるイメージを映画によって再現できたという意味で、やはり優れた作品と言って良いだろう。

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