村山由佳「ヘヴンリー・ブルー」

村山由佳の最新刊(集英社/2006.8)である。
「天使の卵」・アナザーストーリーのサブタイトル通り、「天使の卵」と続編「天使の梯子」をつなぎつつ、さらにその先に続いて行くストーリーとなっている。語り手は夏姫。
村山自身は、次のように語っている。
「『卵』ではいわば歩太と春妃の恋にとって邪魔者だった夏姫ですが、視点を変えて彼女の目から見るならば、姉の春妃は大好きな恋人を自分から奪っていった恋敵だし、歩太は自分を裏切った勝手な男。なのに、忘れられない。二人のことを好きなのに、二人の仲を赦せない。そんな彼女が、最後に姉にぶつけた言葉の呪いからどうやって逃れ、再び新しい人生を生き直すことができるのか――『ヘヴンリー・ブルー』では、そういう夏姫の心の揺れを丹念に追ったつもりです。」
この2作を既に読んでいる人ならば、この本は読む必要はないのかも知れない。ストーリーはわかっているし、登場人物も同じである。しかし、同じ登場人物、同じストーリーであっても、見方を変えるとそれまで見えていなかったものが見えてくることも事実であり、この作品の狙いはそこにあるように思う。
男と女、恋人同士、姉と妹、教師と教え子・・、いろいろな人間関係で成り立っている社会。それぞれが決して独立の関係ではなく、この物語のように思わぬ重なりが悲劇を招くこともある。特に男女の関係は冷静でいようとすればするほどそうできないもの・・。
この作品を、前2作のレビューやリマインダーとしてではなく、あえて、その複雑な心の動きを解きほぐそうとした村山の意図はかなり達成されていると思う。普通のいわゆる1→2→3と続く直列的に続く三部作ではなく、1→2、1→3、2→3、3→2など不規則なリンクがはられている不思議な三部作だ。

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