シベリウス:交響曲第6番

この交響曲を「シンデレラ」と呼んだのは、シベリウス研究家として有名だったイギリスのセシル・グレイだったが、この曲に傾倒して作曲家を志したという吉松隆は、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」との不思議な類似性を指摘する。
http://homepage3.nifty.com/t-yoshimatsu/~data/BOOKS/Thesis/sibelius01.html
この第6交響曲は1923年に作曲されているが、この頃の時代を概観すると、1913年:ストラヴィンスキー「春の祭典」初演、1925年:シェーンベルクが十二音技法を創始、1928年:ラヴェルが「ボレロ」を作曲、美術史的には、モネ:「睡蓮」の連作が創作された頃にあたる。曲を聴いたイメージからはこの曲が「春の祭典」より後に作曲されたとはとても思えない・・。
シベリウスの後期の作風は、ソナタ形式を放棄し、細分化された主題や動機をいかに有機的に結びつけるかという方向に向かって行った。この曲においても第一楽章の冒頭動機を基に、さまざまな動機が錯綜しながら絡み合って行く。そして、ここでは4つの楽章が起承転結という独立した形式ではもはやなく、総合的な有機体とし構成されている。
また、ニ短調とは言いながらも、それは表面上のことで、ロ短調も重要な役割を果たしており、さらに、ドリア旋法やりディア旋法が調性を補完し合って、それらが不思議な感覚を聴き手に与えることとなる。
第一楽章冒頭、澄み切った北欧の空を思わせると同時に、絹織物のような繊細さを併せ持った弦楽器群の語りかけ。続く練習番号B、吉松は「列車のようなリズム」と表現しているが、私にはフィヨルドを進む船のようにも聴こえる・・。
第二楽章、スコアに書きとめられた音符と聴感上の隔たり・・。そして、この楽章の静謐さは一体何から来るのか。深い森、そして後半の木々がかすかにざわめくような静けさ。
第三楽章、吉松は「再び夜汽車のリズムの登場」と表現しているが、まさにその通り。スケルツォでありながら、単にひたすら進み続けて夜汽車は終楽章へと向かう。
第四楽章、この冒頭のテーマ、長かった旅の終わりにやっと辿りついたという感慨がこみ上げる。「切なくも力強いテーマの強奏で始まるフィナーレ。悲しみをこらえながらも肯定的に歌うテーマと、それを優しく受けとめるメロディの対比が美しい。」そして、「再び夜汽車のリズムがさまざまな思いや夢や哀しみを巻き込んで走り始める・・。」
本当に手に汗を握る、息をつかせない緊張の連続の展開部。しかし、そこを抜け出したところは別世界。
忘我と諦観の中でひとりたたずみ、歩きかけ、立ち止まり、再び静かに歩を進めながら終着点にたどり着く。ためらいと静かな余韻を残しながら、やっと手に入れることのできた永遠の安息。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

mollen
2006年08月30日 20:59
シベリウスの6番と聞いてたまらなくなりました。書き込みさせてください。大好きな曲なのです。
蒼い森に霧のかかったような雰囲気の出だし、終楽章も堂々とした始まりの後に推進力を持って流れていきますが、どことなく終焉に向かっている悲しさが滲みますね。この曲も曲自身が持つ透明感を見事に出している、カラヤンがグラモフォンに入れた録音がベストと信じております。
しかし、実演されるとは何とも羨ましい!でも2楽章冒頭とか嫌らしそうです。
2006年08月31日 22:43
mollen様
いつもコメントありがとうございます。地味な第6番ですが、意外にファンが多いようです・・。今度は聴き比べもやってみましたのでご参照下さい。確かに第二楽章冒頭は難しいです。

この記事へのトラックバック

  • シベリウス:交響曲第6番ニ短調

    Excerpt: ムストネン=N響によるシベリウス第6の放送を観た(2009年5月9日/NHKホール)。 シベリウスの6番は私の大好きな曲で、3年前に演奏したことはあるがコンサートで採り上げられることは滅多にない。h.. Weblog: Zauberfloete 通信 racked: 2009-06-06 23:57
  • シベリウス:交響曲第6番ニ短調

    Excerpt: 「ヘルベルト・ブロムシュテット自伝」(アルテスパブリッシング/2018.10)を読んでいたら、ブロムシュテット=サンフランシスコ交響楽団の演奏(DECCA/1995)のこの曲を聴きたくなり、ずいぶん久.. Weblog: Zauberfloete 通信 racked: 2019-01-25 22:10