Zauberfloete 通信

アクセスカウンタ

zoom RSS モーツァルトのB(変ロ)管ホルンの用法について〜その2〜

<<   作成日時 : 2013/01/04 22:55   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 3 / コメント 2

前回の記事に関し、cherubinoさんから貴重なコメントをいただいた。
http://zauberfloete.at.webry.info/201212/article_19.html
http://gospels.cocolog-nifty.com/classic/2013/01/post-414c.html#comment-75558808
前回の記事で、私は交響曲第18番の第二楽章のスコア上の記載に関して、モーツァルトがそのように書いたものだと勘違いしていたのだが、cherubinoさんのご指摘通り、また、音楽之友社版ベーレンライターのスコア序文をよく読むと、第二楽章においてもホルン2本があとから付け加えられたと書いてある。
モーツァルトはこの交響曲の作曲プロセスにおいて、メヌエット楽章のトリオに至って初めて<Corni in C alto>を総譜の一番上に書き加え、それに伴い先立つ二つの楽章にもホルン2本を付け加えたということになる。
それでは、モーツァルトが付け加えたのはB管ホルンなのか、それともF管ホルンなのか。
この曲の第二楽章は主調であるヘ長調の下属調である変ロ長調。従って一般的にはB管ホルンが当初想定されていたのではと思われるのだが、上記cherubinoさんの分析によれば、必ずしも主調の管が使われるとは限らないケースもあるという。
モーツァルトにより第18番以前に作曲されたヘ長調の交響曲のうち、第13番K112 とK75(偽作の疑いあり)は、緩徐楽章にホルンが使われていないので除くとして、残りの3曲のうち、K.Anh223(19a)では、第2楽章が変ロ長調になっているにもかかわらず、他の楽章と同じくモーツァルトはF管のホルンで通している。 第6番(K43)においても、第2楽章は属調となるハ長調になっているが、ここもずっとF管のホルンで通している。もう一曲、K76(42a)は、モーツァルトの真作かどうか疑義が残る作だが、ここでも変ロ長調の第2楽章にはF管のホルンが使われている。
私もこの事実にはこれまで気がつかなかったため、スコアを参照してみた。
K19aとK42a第二楽章は、確かに変ロ長調ではあるが、途中ヘ長調に転調した部分でF管ホルンが効果的に使われていること、またK43第二楽章はかなり短く、F管ホルンはソとレ(実音ドとソ)の音しか出てこない。以上の理由から、モーツァルトはわざわざ替え管を使うまでもないと考えたのではとも思われる。

(以下の稿、1/6追記)
なお、その後のcherubinoさんの分析によれば、モーツァルトの初期のシンフォニーにおいては、緩徐楽章などにおいて主調とは異なる調性の場合においても、ホルンなしまたは第一楽章(主調)において使用した調性のホルンがそのまま使用されているとのことである。
http://gospels.cocolog-nifty.com/classic/2013/01/post-3220.html

話を戻せば、交響曲第18番第二楽章において付け加えられたのはどちらの(B管orF管)ホルンなのか?
自筆譜を見ることができない以上、想像にはなるのだが、私は付け加えられたのはF管ホルンの方だと思う。理由としては、この楽章で主導権をとっているのは明らかにB管ホルンであること。具体的には、11〜12小節の動き、30小節アウフタクトからの低弦と同じリズム、89小節アウフタクトから延々と続くヴァイオリンのメロディの補強、コーダのユニゾンなどの用法である。
ということで、最初用いたB管ホルンにあとからF管ホルンを付け加えたというのが考えられるシナリオである。途中へ長調に転調した箇所(15〜20小節など)では確かにF管ホルンが効果的に使われている。

いずれにしても、現在のスコアにある上段F管、下段B管の順序はモーツァルト自身のものではないということがはっきりした以上、私が前回の記事で採り上げた交響曲第18番の例は除外されることになる。
となると、次に再度検討すべきは「グラン・パルティータ」ということになる。
繰り返しになるが、モーツァルトの自筆譜にはこの曲の冒頭は、上段にF管ホルン、下段に(特に指定のない)B管ホルンと書かれている。
画像

もし、モーツァルトが高い調性の順番にスコアに書き入れたという仮説が正しいとすると、このB管ホルンはバッソ(低い)変ロ調ということになる。実際にアルト(高い)変ロ調で演奏されているケースはこれまで皆無である・・・。

私がcherubinoさんの上記記事を読んでいて、突然思い当たったことがある。
「グラン・パルティータ」におけるホルンについて、私はこれまで漠然とF管ホルンがメインで、B管ホルンがサブのような役割だと思い込んでいた。その理由としては、録音された音源がことごとくB管バッソで演奏されているために、概して音が高いF管ホルンの方が主役だと思っていたことがあげられる(スコアの上段に書かれているせいもあるかも知れないが)。
交響曲第25番や40番のようなメロディラインをつなげる特殊な用法は別にして、モーツァルトが通常、調が異なるホルンを使う場合、メインのホルンは主調のメロディや和声の補強、サブ(他の調)のホルンは、主調のホルンでは出せない音を使ったメロディ補強や和声を埋めるための役割が与えられる。
しかし、「グラン・パルティータ」の(主)調は変ロ長調である。B管ホルンが下段に書かれていることは別として、バッソで演奏した場合、その存在感があまりにも小さくなり過ぎないだろうか・・・。

もう一つ、私が考えている仮説は、モーツァルト自身が持っていたであろう調の性格/イメージについてのものであり、彼にとって最も低いと感じていた調はハ長調ではなかったか、というものである(もちろん、K461第一曲や、K545などのような例外もある。また、余談ではあるが、ヴィオラやチェロなどの楽器の最低音がCであることと無関係とも思われない)。
言い換えれば、二長調以降、順に高くなっていった変ロ長調が最も「高い」調(高く感じられる調)ではないかということである。
http://zauberfloete.at.webry.info/200804/article_5.html
K191(ファゴット協奏曲)、K207(ヴァイオリン協奏曲第1番)、K287(ディヴェルティメント)、K450(ピアノ協奏曲第15番)、K456(ピアノ協奏曲第18番)、K595(ピアノ協奏曲第27番)などの曲はもちろん、ホルンが編成に含まれていない、K137、K159、K458「狩り」などの弦楽四重奏曲や、K333のピアノ・ソナタを聴いても、私にはそれらは「高い」変ロ長調に聴こえる。
ベートーヴェン:交響曲第4番のような「低い」変ロ長調のトーン/概念は、モーツァルトにはなかったのではないだろうかというのが私の考えである。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(3件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
モーツァルトのホルン用法(その1)
 モーツァルト作品におけるホルンの「アルト・バッソ」問題について、年初から Zauberfloete さんとの間で興味深 ...続きを見る
毎日クラシック
2013/01/06 13:13
モーツァルトのホルン用法(その1)
 モーツァルト作品におけるホルンの「アルト・バッソ」問題について、年初から Zauberfloete さんとの間で興味深 ...続きを見る
毎日クラシック
2013/01/12 22:11
モーツァルトのホルン用法(その1)
 モーツァルト作品におけるホルンの「アルト・バッソ」問題について、年初から Zauberfloete さんとの間で興味深 ...続きを見る
毎日クラシック
2013/01/14 01:06

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
Zauberfloete さま
モーツァルトのホルン用法について、早速のご紹介(訂正)、ありがとうございます。結果、K130、K132の特殊事情がわかりましたが、逆に言えば、だからここで初めて彼のもとに<B管の替え管>が導入されたとも想像されます。またよく考えれば、K130緩徐楽章におけるB管ホルンの並行例としては、ほとんど同時期に書かれたK132の緩徐楽章をあげれば十分かもしれません。
《グラン・パルティータ》については私も少し調べてみましたが、自筆譜の上下関係を否定するだけの手がかりは、残念ながらまだ見つかりません。これはいずれ自分のブログに詳しく画像入りで書こうと思うのですが、実は宗教劇『救われたベトゥーリア』K118(74c)の序曲(ニ長調)には、4本ホルン(F管2、D管2)が使われていて、新全集ではなんと「D上ーF下」になっているのです。これは明らかな例外のひとつで、これが正しければ《グラン》もくつがえせると思ったのです。しかし、念のため校訂報告書を見てみたら、自筆譜は上から「2 trombe in D/due Corni in f/due Corni/oboe(2段)/Violini(2段)/Viola/fagotto/Bassi」の順でした。2番目のCorniに調がついてませんが、一番上の欄外に「in D」とあり、D管であることは自明です。残念! しかし新全集の譜表順がこんなにあてにならないとなると、私の調べたホルンの調もやはり自筆譜等にあたらないとだめかなあ。不安になってきました(笑)。
cherubino
2013/01/06 17:04
cherubinoさま
いろいろ調べていただきありがとうございます。
素人の妄想にお付き合いいただきまして感謝しております。私ももう少し考えてみたいとは思っていますが・・・。
Zauberfloete
2013/01/07 00:09

コメントする help

ニックネーム
本 文
モーツァルトのB(変ロ)管ホルンの用法について〜その2〜 Zauberfloete 通信/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる